事業参入

有料職業紹介の免許取得|法人の費用・期間・要件【稟議用】

14分
有料職業紹介の免許取得|法人の費用・期間・要件【稟議用】

有料職業紹介の免許(許可)取得を法人の新規事業として検討するとき、最初に必要なのは「費用・期間・要件を稟議に書ける精度」で把握することです。本記事では、法定費用14万円から基準資産500万円の資金拘束まで、法人が決裁に使う数字を一覧化して解説します。

結論:法人が有料職業紹介の免許を取得する直接費用は、法定費用14万円(登録免許税9万円+収入印紙5万円)+職業紹介責任者講習8,800〜12,500円のみです。ただし実質的なハードルは「基準資産500万円以上・現金預金150万円以上」という資金要件で、これは支出ではなく資金拘束として稟議に記載します。申請から許可までは約3〜4ヶ月、許可の有効期間は新規3年です。

有料職業紹介の免許取得にかかる総コスト一覧【稟議転記用】

まず、稟議書の「投資額」欄にそのまま転記できる形で、免許取得に関わるコストを全て並べます。ポイントは、「費用として消えるお金」と「拘束されるだけで消えないお金」を分けて書くことです。ここを混同した稟議は、経理部門や決裁者からの差し戻しが起きやすくなります。

※2026年7月時点の情報。制度・料金は必ず一次情報をご確認ください。

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項目 金額 稟議上の扱い 備考
登録免許税 90,000円 費用(一時) 1事業所あたり
収入印紙(許可手数料) 50,000円 費用(一時) 1事業所目
職業紹介責任者講習 8,800〜12,500円/名 費用(一時) 実施機関により異なる
基準資産(純資産) 500万円×事業所数 資金拘束(支出ではない) 会社全体の直近決算で判定
うち現金・預金 150万円+(事業所数−1)×60万円 資金拘束(支出ではない) 預金残高等で確認される
面談スペースの整備 会社の状況により変動 費用または設備投資 既存オフィス内で完結すれば追加ゼロも可
求職者・求人管理システム 会社の選定により変動 月額費用(継続) スプレッドシート運用から開始する例も
開業後の集客費 設計により変動 月額費用(継続) 参入後の最大の変動要素(後述)
出典: 厚生労働省「職業紹介事業(許可要件・手続き)」法定費用・資産要件の一次情報は厚生労働省の職業紹介事業ページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/shoukai/)で確認できます。
稟議で誤解されやすいポイント

「参入に500万円かかる」という書き方は不正確です。500万円は要件として保有していることを示す純資産であり、支払うお金ではありません。稟議書には「直接支出:約15万円/資金要件:純資産500万円以上・現金預金150万円以上(自社の直近決算で充足済みか要確認)」と分けて記載すると、決裁者が投資規模を正しく理解できます。

なお、要件そのものの網羅的な解説(事務所要件・責任者要件の細部)は既存記事の有料職業紹介事業の許可要件に譲り、本記事は「法人の意思決定に必要な数字と段取り」に絞って進めます。

法人が満たすべき資産要件|判定は「会社全体の直近決算」

新規事業として参入する法人にとって重要なのは、資産要件が事業部単位ではなく会社全体の決算で判定されるという点です。

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判定項目 基準 見る書類
基準資産額 500万円以上×事業所数 直近年度の決算書(貸借対照表の純資産)
現金・預金 150万円+(事業所数−1)×60万円 預金残高証明書等

既に本業で黒字経営をしている事業会社であれば、この要件は追加の資金調達なしで充足しているケースが多いはずです。稟議の前に経理部門へ「直近決算の純資産額」と「現預金残高」を確認するだけで、要件充足の可否は即日判断できます。

債務超過・純資産不足の場合の選択肢

一方、設立間もない子会社で参入する場合や、直近決算が債務超過の場合は対応が必要です。一般に検討される選択肢は次の通りです。

  • 増資(親会社からの出資):借入と異なり純資産が増えるため、要件充足の王道です。融資・借入金は負債計上されるため純資産は増えない点に注意してください
  • 中間・月次決算の活用:増資後の状態を公認会計士等の関与のもとで示す方法が案内される場合があります。取り扱いは管轄労働局へ事前確認するのが確実です
  • 親会社本体での申請:子会社ではなく、要件を満たす親会社の一事業部として許可を取る構成も検討余地があります

また、自社で新規に免許を取得する以外に、既存の許可事業者を法人ごと取得する参入ルートもあります。事業譲渡では許可は承継されませんが、株式譲渡(法人ごとの取得)であれば許可は維持されるためです。参入方式の比較は人材紹介事業への参入方法の全体像で詳しく解説しています。

免許取得の申請フロー|労働局申請から許可まで約3〜4ヶ月

申請の窓口は、事業所所在地を管轄する都道府県労働局です。法人の稟議・事業計画に影響するのは「申請してから約3〜4ヶ月は開業できない」という時間軸です。

1

事前準備(定款・責任者・事務所)

定款の事業目的に「有料職業紹介事業」を追加し、職業紹介責任者候補が講習を受講。面談スペースなど事務所側の準備も並行します。旧来の面積基準(20㎡)は撤廃済みで、現在はプライバシーを確保できる構造かどうかが問われます。

2

管轄労働局へ申請書類を提出

許可申請書・事業計画書・決算書類・残高証明・事務所図面などを提出します。登録免許税9万円・収入印紙5万円はこの段階で必要です。

3

審査(約3〜4ヶ月)

書類審査と事務所の確認が行われます。この期間は「待ち時間」ではなく、求人開拓・システム選定・集客設計を並行で進める仕込み期間です。

4

許可取得・事業開始

許可の有効期間は新規3年・更新後5年です。許可番号を取得したら、広告・Webサイト等への番号表示など運営ルールに沿って事業を開始します。

意思決定から開業後90日までを月単位で逆算したタイムラインは、人材紹介の参入スケジュールで逆算表として整理しています。事業計画への落とし込みはそちらを併用してください。

職業紹介責任者の選任|2026年4月のカリキュラム変更に注意

免許取得には、事業所ごとに職業紹介責任者を選任し、指定機関の職業紹介責任者講習を受講させる必要があります。

  • 受講料の目安は8,800〜12,500円(実施機関により異なる)
  • 2026年4月から講習カリキュラムが変更され、従事者への教育に関する内容が充実しました。社内で受講済み者がいる場合も、修了時期と有効性を確認しておきましょう
出典: 一般社団法人 日本人材紹介事業協会2026年4月のカリキュラム変更の詳細は日本人材紹介事業協会の告知(https://www.jesra.or.jp/category/news/392/)を、講習日程は全国民営職業紹介事業協会(https://www.minshokyo.or.jp/)を参照してください。

法人の場合、「誰を責任者にするか」は単なる手続きではなく体制設計の問題です。責任者が営業やキャリアアドバイザー業務を兼務できるのか、最小何名で事業が回るのかは、人材紹介事業の体制設計|責任者の兼務可否・最小人員Q&Aで詳しく整理しています。

社内稟議の書き方|5項目テンプレート

免許取得そのものより難しいのが、社内決裁です。ここでは人材紹介参入の稟議書に盛り込むべき5項目と、記載例の骨子を示します。

1. 目的(なぜ自社がやるのか)

既存事業とのシナジーを1文で言い切ります。例:「既存顧客(採用ニーズを持つ取引先)に対し、人材紹介という新たな収益源で深耕する」「スクール卒業生の就職支援を内製化し、受講料以外の収益を確保する」など、自社が持つ資産(顧客基盤・候補者接点)と接続させるのが要点です。

2. 市場性

使える公的・調査データは限られるため、出典付きの数字に絞ります。人材紹介市場は2024年度4,490億円・前年度比12.0%増(矢野経済研究所)、有料職業紹介事業所数は30,561事業所(令和6年度職業紹介事業報告書・速報、報告書提出ベース)です。「成長市場だがプレイヤーも多い」という両面を正直に書くほうが、決裁者の信頼を得られます。

出典: 矢野経済研究所「人材ビジネス市場に関する調査」市場規模4,490億円・前年度比12.0%増の出典は矢野経済研究所(https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3942)です。

3. 投資額

本記事冒頭の総コスト一覧を転記します。直接支出(約15万円+α)と資金拘束(純資産500万円・現預金150万円)を分けることが最重要です。

4. 回収計画(モデルケース)

回収計画は前提を明示したモデルケースで示します。手数料相場は理論年収の30〜35%が主流です。

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前提
紹介手数料率 30%
想定年収 400万円
1成約あたり売上 120万円
月間成約数(初年度目標) 月2件
月間売上 240万円

この前提なら、免許取得の直接費用(約15万円)は初成約1件で回収でき、実質的な回収議論は「人件費と集客費を月次売上が上回るまでの期間」に集約されます。稟議には、単月の売上見込みだけでなく黒字化までの月次推移を添えると説得力が上がります。以下は担当2名・許可取得後6ヶ月で単月黒字化を目指すモデルケースの骨子です。

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時期 活動 売上(モデル) 主な費用
開業1〜2ヶ月目 面談数の積み上げ・推薦開始 0円(成約前) 人件費・集客費
開業3〜4ヶ月目 初成約〜入社(選考リードタイム) 120〜240万円 人件費・集客費
開業5〜6ヶ月目 月2件成約が安定 240万円/月 人件費・集客費

※上記は前提(手数料率30%・年収400万円・月2成約)に基づくモデルケースです。前提を変えると結果は変わります。人材紹介は面談から入社・入金までのリードタイムが長く、開業から数ヶ月は売上ゼロで費用だけが先行する点を稟議に明記しておくと、後の追加決裁が不要になります。売上・費用計画の作り込みには人材紹介の事業計画書テンプレートが使えます。

5. リスク

隠さず書くべきリスクは3つです。

  • 集客リスク:人材紹介業の倒産は2024年度21件と過去最多(東京商工リサーチ)で、主要因は求職者集客のコスト高騰です。稟議段階で集客手段と想定CPAを明記します
  • 人材リスク:責任者・キャリアアドバイザーの採用/転換が遅れると開業が遅延します
  • 規制リスク:2025年職安法改正(お祝い金勧奨禁止等)をはじめ、運営ルールの遵守体制が必要です
出典: 東京商工リサーチ「人材紹介業の倒産動向」人材紹介業の倒産2024年度21件・過去最多の出典は東京商工リサーチ(https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1201152_1527.html)です。

免許取得後に発生する義務とランニングコスト

稟議で見落とされがちな「取得後」の項目も先に押さえておきます。

  • 事業報告書の提出:毎年4月30日期限で提出義務があります。実績ゼロでも提出は必要です
  • 許可の更新:新規許可の有効期間は3年。更新後は5年ごとです
  • 継続的な集客費:免許は取れば終わりですが、集客は開業後ずっと続くコストです

特に集客費は、参入後のPLを最も大きく左右します。広告運用の内製にはノウハウと人員が必要なため、立ち上げ期は面談確定済みの求職者を1件単位の固定単価で受け取れる着座課金型送客(例:L reach、1.5万〜3.5万円税別/着座・初期費用/月額0円)を使い、CPAを固定した状態で稟議の回収計画を守る、という設計も選択肢の一つです。集客を含めた参入判断の全体像は人材紹介事業参入の完全ガイドを参照してください。

稟議前チェックリスト|申請準備の抜け漏れ確認

稟議を起案する前に、以下を確認しておくと社内質問への回答がスムーズです。担当部門を明記して稟議書の添付資料にすることもできます。

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区分 確認事項 確認先
資産 直近決算の純資産が500万円以上あるか 経理部門
資産 現金・預金が150万円以上あるか(残高証明が取れるか) 経理部門
法人 定款の事業目的に職業紹介事業の記載があるか 法務・総務
事務所 面談時のプライバシーを確保できるスペースを用意できるか 総務
人員 職業紹介責任者の候補者がいるか(講習受講の日程確保) 人事・事業責任者
人員 キャリアアドバイザー役を既存社員の転換か採用か決めたか 人事
計画 黒字化までの月次計画と集客手段・想定CPAを明記したか 事業責任者
規制 2025年職安法改正など運営ルールの遵守体制を記載したか 法務・事業責任者
起案から申請までの現実的な段取り

経理確認(純資産・現預金)は即日〜数日、定款変更が必要な場合は株主総会決議と登記で数週間、責任者講習は開催日程との兼ね合いで数週間先になることもあります。稟議承認後すぐ動ける状態を作るため、講習の空き日程と定款の現状は起案前に確認しておきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q
有料職業紹介の免許取得に最低いくら必要ですか?
A
直接支出は法定費用14万円(登録免許税9万円+収入印紙5万円)と職業紹介責任者講習8,800〜12,500円で、合計約15万円です。ただし別途、基準資産500万円以上・現金預金150万円以上を保有していることが要件となります。これは支出ではなく資金拘束です。
Q
債務超過の法人でも免許は取れますか?
A
直近決算で基準資産(純資産500万円以上)を満たさない場合、そのままでは許可されません。増資により純資産を回復させる方法が一般的で、増資後の状態を示す書類の取り扱いは管轄労働局への事前相談で確認してください。借入金では純資産が増えないため要件は満たせません。
Q
申請から開業までどのくらいかかりますか?
A
労働局への申請後、審査に約3〜4ヶ月かかります。申請前の準備(講習受講・書類作成・定款変更等)を含めると、意思決定から開業まで半年前後を見込むのが現実的です。逆算スケジュールは参入スケジュールの記事で詳述しています。
Q
免許は会社単位ですか?事業所単位ですか?
A
許可は法人(事業主)単位ですが、資産要件と法定費用は事業所数に連動します。基準資産は500万円×事業所数、現金預金は150万円+(事業所数−1)×60万円が必要です。まず1事業所で始め、軌道に乗ってから拠点追加するのが一般的です。
Q
定款に職業紹介事業の記載がない場合はどうなりますか?
A
事業目的に「有料職業紹介事業」等の文言を追加する定款変更(株主総会決議+変更登記)が必要です。登記には日数がかかるため、稟議承認後すぐに着手すべき項目の一つです。
Q
社労士など専門家に申請を依頼すべきですか?
A
自社の管理部門で完結させることは十分可能です。一方、決算書の読み替えや事務所要件の判断に不安がある場合、申請代行の報酬(専門家により異なる)を払ってでも初回申請を確実に通すという判断もあります。差し戻しによる1〜2ヶ月の遅延コストと比較して決めるとよいでしょう。
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まとめ|免許取得の費用は「約15万円+資金要件」、本当の勝負は取得後

  • 法人の有料職業紹介の免許取得は、直接支出約15万円・資金要件500万円(現預金150万円)・期間3〜4ヶ月+準備期間が基本の数字
  • 資産要件は会社全体の直近決算で判定されるため、黒字の事業会社なら追加調達なしで満たせるケースが多い
  • 稟議は「目的・市場性・投資額・回収計画・リスク」の5項目。費用と資金拘束を分けて書くのが通過のコツ
  • 2026年4月から責任者講習のカリキュラムが変更。責任者の選任は体制設計とセットで検討する
  • 免許は参入の入口にすぎず、開業後の最大の壁は求職者集客。回収計画の実効性は集客設計で決まる

参入検討の全体像は人材紹介事業参入ガイド(ピラー記事)と、参入検討者向けハブ人材紹介事業への参入にまとめています。免許取得と並行して、開業初月から面談を組むための集客設計もぜひ検討してください。

L

L reach編集部

人材紹介事業ナレッジ編集チーム

foresma株式会社が運営する求職者送客サービス『L reach』編集部。人材紹介会社の支援実績をもとに、集客・CV・運用ノウハウを発信しています。

運営:foresma株式会社最終更新:

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