人材紹介事業へ新規参入する法人にとって、職業紹介責任者の兼務可否と最小人員の見極めは体制設計の最初の論点です。1名兼務型からRA・CA分離型までの体制パターンを比較し、責任者の要件と兼務の範囲を業務運営要領にそって確認したうえで、少人数で事業を回すための実務をQ&A形式で整理しました。
人材紹介事業は、職業紹介責任者を含む少人数の体制でも始められます。責任者は事業所ごとに、その事業所に専属の人を、自社が雇用する労働者か役員(個人事業なら事業主本人)から選びます。同じ事業所の中で責任者がCA・RAの実務を担う形はとれますが、他の事業所の責任者を兼ねられるのは、事業所を新設する場合の期間限定の特例に限られます。どちらの場合も、名前を置くだけでなく、苦情処理や個人情報の管理などを実際に統括できることが前提です。少人数で回すには、面談と推薦以外の業務(集客・プレ面談・日程調整)をどこまで外部に任せるかがポイントになります。
最小体制3パターン比較|1名兼務型・専任1名型・RA/CA分離型
新規参入時の体制は、概ね次の3パターンに集約されます。自社の投下可能な人員数と、既存事業との兼ね合いで選びます。
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| 項目 | 1名兼務型 | 専任1名+兼務型 | RA・CA分離型 |
|---|---|---|---|
| 人員イメージ | 責任者=RA=CAを1名が兼務 | 専任CA1名+責任者は管理職が兼務 | RA1名+CA1名以上+責任者 |
| 想定月間面談数 | 少(1名の稼働に依存) | 中 | 中〜多 |
| 初期人件費 | 最小 | 中 | 大 |
| 強み | 意思決定が速い・低コスト | CAが面談に集中できる | 求人開拓と求職者対応が両輪で回る |
| 弱み | 集客・調整業務で面談時間が削られる | 求人開拓が手薄になりがち | 立ち上げ期には過剰投資になり得る |
| 向く会社 | まず小さく検証したい会社 | 既存事業と管理機能を共有できる会社 | 求人・求職者の両面を最初から攻める会社 |
表の「兼務」は、同じ事業所の中で責任者が他の業務も担うという意味です。責任者は事業所ごとに専属で置き、他の事業所の責任者との掛け持ちは、事業所を新設する場合の特例を除いてできません。
RA(リクルーティングアドバイザー)は求人企業側の開拓・条件調整を、CA(キャリアアドバイザー)は求職者側の面談・提案を担う役割です。大手は分離型が主流ですが、新規参入では両方を1名が担う「両面型」から始め、面談数の増加に応じて分離していく進め方がよくとられます。
どのパターンでも共通して必要なのが職業紹介責任者の選任です。次章で要件と兼務の考え方を整理します。
職業紹介責任者の要件と選任の基本
職業紹介責任者は、紹介の実務を統括する役割です。業務運営要領が示す主な要件は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 選任の単位 | 事業所ごとに、その事業所に専属の責任者を選ぶ |
| 選べる人 | 自社が雇用する労働者の中から選ぶ(事業主本人、法人の場合は役員も可) |
| 人数 | 事業所で職業紹介の業務に従事する人が50人以下なら1人以上、50人を超え100人以下なら2人以上。それ以上は50人ごとに1人ずつ増やす |
| 経験 | 成年に達した後、3年以上の職業経験がある(人材業界の経験には限られない) |
| 講習 | 職業紹介責任者講習を修了している(許可の申請の受理日前5年以内。更新時は有効期間満了日前5年以内) |
| 欠格事由など | 職業安定法の欠格事由に当たらない、未成年者でない など |
出典:厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」第3 許可基準。講習の受講料は実施機関で異なり、令和8年度の一般料金は税込8,800〜14,000円です(会員割引あり)。
2026年4月1日からは講習のカリキュラムが変わり、事業所ごとに従事者教育を行うよう促す内容が加わりました。責任者には、社内の従事者教育を主導する役割がより明確に求められています。
講習カリキュラムの変更は日本人材紹介事業協会のお知らせ、講習の日程は全国民営職業紹介事業協会などの実施機関の案内で確認できます。
新規事業の場合、責任者候補は「事業責任者クラスで、長期的に事業に関与し続ける人」から選ぶと運営が安定します。責任者が交代するときは、交代の翌日から30日以内に変更の届出が必要です。短期で異動する可能性のある人を形式的に立てると、届出や講習の受講で手間が増えます。要件・費用の詳細は有料職業紹介の免許取得|法人の費用・期間・要件で稟議用に整理しています。
責任者の兼務はどこまで可能か|考え方と確認のしかた
「責任者がCAやRAを兼ねてよいのか」「既存事業の管理職が責任者を兼務できるのか」は、参入を検討する企業からよく出る質問です。
まず、責任者の役割を確認しておきます。責任者は、①求人者・求職者からの苦情の処理、②求人者の情報と求職者の個人情報の管理、③求人・求職の申込みの受理や助言・指導など業務の運営と改善、④職業安定機関との連絡調整を統括管理し、従業者に職業紹介の適正な遂行に必要な教育を行います(職業安定法第32条の14)。兼務を考えるときは、「この4つを実際に統括できるか」と「どの事業所の責任者か」の2点に分けると整理しやすくなります。
同じ事業所の中で、責任者が他の業務を兼ねる場合
業務運営要領は、事業主本人や法人の役員を責任者にすることを認めています。小規模な事業所で、責任者が自ら面談や求人対応を担う形がとれるのはこのためです。同じ事業所の中で責任者がCA・RAの実務や既存事業の業務を兼ねること自体を禁じる規定は、要領には見当たりません。ただし、上の4つの業務を実際に担える時間があり、事業所の運営を把握できる働き方であることが前提です。
一方で、次のようなケースは慎重な確認が必要です。
- 常駐性が乏しい場合:責任者は「その事業所に専属」で選ぶため、主に別の拠点で勤務していて紹介事業所の運営実態を把握できない働き方は、選任の趣旨に照らして問題になり得ます
- 他社の社員を責任者にしたい場合:責任者は自社が雇用する労働者(または役員)から選びます。親会社やグループ会社の社員を充てるなら、雇用関係や役員就任をどう整えるかを事前に労働局へ確認します
- 名目だけの選任:苦情対応や個人情報の管理を実際には別の人が行い、責任者は名前だけ、という運用は選任の趣旨に反します
他の事業所の責任者を兼ねる場合(新設事業所の特例)
責任者は事業所ごとに専属で置くのが原則で、1人で複数の事業所の責任者を兼ねる構成は原則として成り立ちません。例外は、すでに有料職業紹介を行っている事業者が事業所を新設する場合です。
- 新設事業所の責任者として、既存事業所の責任者を兼任させられるのは、新設した事業年度の翌事業年度末まで
- 兼任できるのは、責任者として実務に従事した期間が通算10年以上の人に限られる
- 2つの事業所で職業紹介の業務に従事する人は、責任者1人につき50人以下
- 事業所新設の変更届に「職業紹介責任者兼任届出書」を添え、オンライン会議などで遠隔から統括管理できる体制や、必要に応じて現地に出向いて対応できる体制を整える(許可条件として付されます)
出典:厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」第3 許可基準(職業紹介責任者の選任・兼任)
兼務の可否は、勤務実態・事業所の規模・担当業務の内容によって判断が分かれる領域です。ネット上の一般論で見切り発車せず、申請前の事前相談で「この体制図で問題ないか」を管轄労働局に確認するのが、結果的に最も速く確実です。体制図・業務分担表を持参すると相談がスムーズに進みます。
新規事業の人員Q&A|既存社員の転換・業務委託・教育
Q. 既存社員をCAに転換できるか?
できます。CAに人材業界の経験は必須ではなく、責任者の要件も「成年に達した後3年以上の職業経験」で、業界は問われません。営業職・カスタマーサクセス・販売職など、既存事業で顧客折衝を担ってきた社員は、求職者面談・企業提案への適性が高い傾向があります。ただし、求人理解・職業紹介のルール・面談スキルの教育は必要で、立ち上げから戦力化まで一定の期間を見込むべきです。CAの生産性管理の考え方はキャリアアドバイザー生産性向上の5つの方法が参考になります。
Q. 業務委託のCAで立ち上げてよいか?
慎重な設計が必要です。業務委託者に紹介実務を担わせる場合、指揮命令・責任の所在・個人情報の取り扱いなど、雇用とは異なる論点が生じます。事業の中核業務を委託に依存する体制は、責任者による管理・教育が及びにくくなるリスクもあります。なお、責任者は自社が雇用する労働者(または役員)から選ぶため、業務委託の人を責任者にすることはできません。採用が間に合わない場合の現実解としては、「中核業務(面談・推薦)は自社雇用の人員が担い、周辺業務(集客・日程調整等)を外部サービス化する」切り分けが安全です。この場合も、体制の適否は管轄労働局への確認をおすすめします。
Q. 未経験チームの教育はどう設計するか?
最低限、次の3領域をカバーします。
- 法令・ルール:職業安定法上の禁止事項、個人情報の取り扱い、手数料の明示。責任者講習の内容を責任者から従事者へ展開する形が基本です(2026年4月のカリキュラム変更でも従事者教育が重視されています)
- 面談スキル:ヒアリング→求人提案→推薦意思の確認までの型を作り、ロールプレイで習熟させます
- 求人開拓:RA業務のノウハウは人材紹介のRA営業のコツ7選のような実践知を教材化すると立ち上がりが速くなります
少人数で回す外部化設計|集客・プレ面談・日程調整を手放す
最小体制の成否は「1名あたりの面談時間をどれだけ確保できるか」で決まります。CAの業務を分解すると、売上に直結するのは面談・推薦・クロージングであり、その手前の集客・スクリーニング・日程調整は外部化可能な工程です。
| 工程 | 内製した場合の負荷 | 外部化の手段 |
|---|---|---|
| 求職者集客 | 広告運用・SNS・スカウトの専任級の工数 | 送客サービス・広告運用代行 |
| スクリーニング | 応募者への連絡・意欲確認の反復作業 | プレ面談付き送客サービス |
| 日程調整 | リスケ対応含め細切れに発生 | 日程調整代行・調整ツール |
| 面談・推薦 | 外部化しない(売上の源泉) | — |
例えば着座課金型送客のL reachは、集客から、オペレーターによる全件15分のプレ面談、日程調整までを担い、面談が確定した求職者を送客するモデルです。初期費用・月額費用0円で、着座単価は1.5万〜3.5万円(税別。職種・エリアで変動)、登録者の平均年齢は24.7歳・20代比率は95.7%です。上表の外部化できる3工程をまとめて外に出せるため、1名兼務型や専任1名型でも面談数を計画的に積める体制が組めます。外部に任せても、求職の申込みの受理や求職者の個人情報の管理は自社の業務として残り、責任者が統括します。少人数参入と相性のよい選択肢の一つとして、体制設計の段階で比較しておく価値があります。
立ち上げ期の時間軸(審査中の準備・開業後90日)と体制の関係は人材紹介の参入スケジュールで詳述しています。
体制構築の手順|4ステップ
体制設計を決裁・申請と接続するための手順を4ステップで示します。
投下可能な人員と工数を棚卸しする
専任にできる人数、兼務で関与できる管理職、既存事業から転換可能な候補者をリスト化します。「フルタイム換算で何人分の工数を人材紹介に使えるか」を数字にするのがゴールです。
体制パターンを仮決めし、責任者候補を指名する
前章の3パターンから工数に合うものを選び、責任者候補(長期関与できる事業責任者クラス)を指名します。候補者が成年に達した後3年以上の職業経験の要件を満たすかも、履歴書で確かめます。責任者講習の受講日程もこの時点で押さえます。講習日程は満席になることがあり、体制設計の隠れたボトルネックです。
体制図・業務分担表を作り、労働局に事前相談する
誰が責任者としての管理業務(苦情対応・個人情報管理・従事者教育)を担い、誰がCA・RA実務を担うかを1枚にまとめ、兼務の適否を含めて管轄労働局に確認します。この1枚は許可申請でも社内説明でもそのまま使えます。
外部化する工程を決め、開業前に契約まで終える
集客・プレ面談・日程調整のうち外部化する範囲を決め、審査期間中にサービス選定・契約を完了させます。開業後に探し始めると、立ち上げ90日の面談計画が崩れます。
体制拡大のタイミング|1名→2名→分離型への移行基準
体制は最初から完成形を目指すのではなく、数字を基準に段階的に拡大します。
- 1名→2名:面談枠が埋まり続け、推薦・フォローが遅延し始めたら増員のサイン。売上の再現性(面談→成約の歩留まりの安定)が確認できてからが安全です
- 両面型→RA・CA分離:求人開拓の停滞がボトルネックになった段階で分離を検討します。求人数と求職者数のバランスが崩れると、どちらかの面談が空回りします
- 責任者の追加:事業所の新設時には、その事業所の責任者選任が必要になります。既存事業所の責任者(責任者としての実務経験が通算10年以上の人)を兼任させる特例は、新設した事業年度の翌事業年度末までの期間限定です。また、事業所で職業紹介の業務に従事する人が50人を超えると、責任者は2人以上必要になります。拠点展開の計画がある場合、講習受講者を早めに複数確保しておくと移行が滑らかです
よくある質問(FAQ)
少人数体制のまま、面談数だけ増やす方法があります
L reachは、CAの工数を増やさずに面談数を増やすための送客サービスです。業務改善と並行して使えます。
相談前に整理できること
- 面談数の入口を改善
- 対応工数を削減
- KPI改善に必要な母集団を補完
まとめ|体制は「最小で始めて、数字で拡大」が定石
- 新規参入の体制は1名兼務型・専任1名型・RA/CA分離型の3パターン。まず小さく始めて、面談数と歩留まりの実測値で拡大を判断する
- 職業紹介責任者は事業所ごとに専属で、自社が雇用する労働者か役員から選ぶ。要件は成年に達した後3年以上の職業経験と、5年以内の講習修了など。同じ事業所の中でCA・RAを兼ねる形はとれるが、他の事業所の責任者との兼任は新設事業所の特例に限られる。可否の最終判断は管轄労働局への事前確認が確実
- 2026年4月の講習カリキュラム変更で従事者教育の重要性が増した。責任者を起点にした社内教育の設計をセットで
- 少人数で回す鍵は外部化。集客・プレ面談・日程調整を外に出し、自社人員は面談と推薦に集中させる
参入全体の意思決定は人材紹介事業参入ガイド、体制と費用・スケジュールの関係は人材紹介事業への参入完全ガイドから関連記事をたどれます。
L reach編集部
人材紹介事業ナレッジ編集チームforesma株式会社が運営する求職者送客サービス『L reach』編集部。人材紹介会社の支援実績をもとに、集客・CV・運用ノウハウを発信しています。
業務フローを改善して歩留まりが上がっても、面談の母数が足りなければKPIの伸びはすぐに止まります。
初期費用・月額費用なし/契約期間の縛りなし



