無料職業紹介と有料職業紹介の違いを、職業安定法の定義から確認していきます。「無料で紹介するだけなら許可は不要」と考えて、自社サービスに人材の引き合わせを組み込もうとする企業もありますが、無料の職業紹介にも原則として許可が必要です。コンプライアンス確認のポイントを整理しました。
無料職業紹介と有料職業紹介の違いは「いかなる名義でも対価を受け取らないかどうか」で、どちらも職業安定法上、原則として厚生労働大臣の許可が必要です。届出で無料職業紹介ができるのは、学校や特別の法律で設立された一定の法人などに限られます。「無料だから自由にできる」は誤解で、求人と求職を引き合わせる「あっせん」に踏み込めば職業紹介に当たり得ます。名目を変えただけでは無料とは認められず、実態で判断されます。個別の事案は、管轄の労働局や専門家に確認してください。
無料職業紹介と有料職業紹介の違い|定義と法的根拠
まず、職業安定法上の整理を確認します。
職業紹介とは、職業安定法第4条で「求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあっせんすること」と定義されています。この定義には「有料か無料か」の区別はありません。つまり、対価を取らなくても、雇用関係の成立をあっせんすれば職業紹介です。「あっせん」とは、求人者と求職者の間をとりもって、雇用関係の成立が円滑に行われるように第三者として世話することを指します(厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」)。
その上で、同法は職業紹介事業を2つに分けて規制しています。
- 有料職業紹介事業(職業安定法第30条):無料職業紹介以外の職業紹介を行う事業。営利目的かどうかにかかわらず、職業紹介に関して対価を受け取るもの。厚生労働大臣の許可が必要
- 無料職業紹介事業(同法第33条):いかなる名義でも手数料・報酬を受けないで行う職業紹介。こちらも原則として厚生労働大臣の許可が必要
例外として、許可ではなく届出で無料職業紹介を行えるのは、学校教育法第1条の学校や専修学校などの長(第33条の2)と、特別の法律で設立された法人のうち一定のもの(第33条の3)です。地方公共団体も、第29条により無料職業紹介を行えます。これらは法律が限定して認めた例外で、一般の事業会社には当てはまりません。民間のスクールでも、学校教育法上の学校・専修学校に当たらなければ届出の対象外で、紹介を行うには許可が必要です(各種学校は、生徒数などの条件を満たせば無料職業紹介の許可を受けられます)。
「なぜ無料なのに規制されるのか」と疑問に思うかもしれません。職業安定法が職業紹介を許可制としているのは、手数料の搾取だけでなく、求職者の個人情報の取扱いや、不適切な紹介による労働者の保護といった観点から、紹介の担い手そのものを規律する趣旨だからです。対価の有無にかかわらず、人の就職に介在する行為には一定の責任と体制が求められる、と理解してください。
違いの一覧表
| 項目 | 有料職業紹介 | 無料職業紹介 |
|---|---|---|
| 対価(手数料・報酬) | 受け取る | いかなる名義でも受け取らない |
| 根拠条文 | 職業安定法第30条 | 職業安定法第33条 |
| 許可の要否 | 厚生労働大臣の許可が必要 | 原則として厚生労働大臣の許可が必要 |
| 主な例外 | − | 学校・専修学校などの長、特別の法律で設立された一定の法人は届出で可(第33条の2・第33条の3)。地方公共団体は第29条 |
| 財産的基礎 | 基準資産額500万円×事業所数、現預金150万円〜 | 一律の金額ではなく「事業を維持運営していくに足る資産または財政的裏付け」 |
| 運営上の主な制限 | 会員の獲得・宣伝など、ほかの目的の手段にしない | 同左に加え、営利法人は本来の営利活動に役立てる目的では行えない |
| 典型例 | 人材紹介会社 | 業界団体・NPO・各種学校などの紹介事業 |
2026年9月時点。職業安定法と厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」(許可基準)によります。
企業のコンプラ確認で重要なのは、「無料か有料か」の前に「そもそも自社の行為が職業紹介に当たるか」です。次のセクションで線引きを見ていきます。
どこからが「職業紹介」か|あっせんと情報提供の線引き
職業紹介の核心は「雇用関係の成立をあっせんすること」です。厚生労働省の業務運営要領は、求人・求職の情報を提供する事業(募集情報等提供)であっても、次のどれかに当たる行為を事業として行えば職業紹介に当たり、許可が必要だとしています。判断がAIなどで自動的に行われていても同じです(2026年9月14日から適用の版で明記)。
- 選別:事業者の判断で選んだ相手にだけ情報を提供する、または選んだ情報だけを提供する
- 加工:提供する相手に応じて、事業者の判断で情報の内容を加工する
- やり取りの加工:求職者と求人者の間の意思疎通を中継するときに、事業者の判断で内容を加工する
| 行為 | 一般的な整理 |
|---|---|
| 全ての求人を全ての求職者が見られる状態で掲載し、双方が自由に選ぶ | 募集情報等の提供(そのうえで一部の求人をメールで一部の人に送るだけなら「選別」に当たらない) |
| 求職者の職歴などをもとに事業者が選んだ求人だけを見せ、ほかの求人は見られないようにする | 「選別」に当たり、職業紹介と判断される |
| 「あなたの経歴なら月○万円で採用される可能性がある」などの文言を付けて求人を送る | 「加工」に当たり、職業紹介と判断される |
| 面接の日程調整に入り、特定の求職者を優先するなど、連絡の順番を差配する | 「やり取りの加工」に当たり、職業紹介と判断される |
| 求人企業に代わって面接し、「採用すべき人材です」といった評価を付けて伝える | 「やり取りの加工」に当たり、職業紹介と判断される |
| 応募があることを確約する広告を出す/スカウトに応じた人をあっせんする | 職業紹介に当たる |
例は、厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」第1(2026年9月14日から適用)の区分の例を要約したものです。考え方は厚生労働省「募集情報等提供と職業紹介の区分について」でも確認できます。
ポイントは、「紹介します」という看板の有無ではなく、実態として双方の間に立って雇用成立に関与しているかで判断されることです。情報提供のつもりでも、候補者を選別して推薦したり、条件交渉を仲介したりすれば、職業紹介と評価される可能性が高まります。
自社の行為をセルフチェックする際は、次の3つの問いが目安になります。
- 選別:不特定多数への情報提供ではなく、自社の判断で相手を絞って人材・求人を薦めていないか
- 仲介・加工:双方の間に立って、面接日程・労働条件・入社時期などを調整したり、伝える内容に手を加えたりしていないか
- 働きかけ:雇用契約の成立に向けて、どちらか(または双方)の意思決定を後押ししていないか
3つとも「していない」なら情報提供の範囲に収まっている可能性が高く、1つでも「している」なら職業紹介該当性の確認が必要な段階です。なお、求職者の情報を集めて求人企業に提供する形(特定募集情報等提供事業)は、職業紹介に当たらない場合でも、事業を始める前に厚生労働大臣への届出が必要です(2022年10月から)。
あっせんに該当するか否かは、行為の態様・関与の度合いを踏まえた個別の判断であり、ここでの整理はあくまで一般的な考え方です。自社のケースが職業紹介に該当するかどうかは、必ず管轄の労働局または職業安定法に詳しい専門家に確認してください。
判断に迷うグレーケース3選
事業会社で起きやすい典型的なグレーケースを3つ紹介します。いずれも「事業のつもりはないのに、実態が職業紹介に近い」パターンです。
ケース1:士業が顧問先に人材を紹介し、謝礼を受け取る
社労士・税理士が顧問先の採用ニーズを聞き、知り合いの人材を引き合わせて成功時に謝礼を受け取る——この場合、雇用関係の成立をあっせんして対価を得ていれば、有料職業紹介に該当し許可が必要と判断され得ます。「紹介料」ではなく「情報提供料」などの名目でも、実態で判断されます。業務運営要領でも、委託費などの額が紹介の実績や雇用の成立によって変わる払い方なら、有料職業紹介と判断されるとしています。顧問先への紹介を正面から収益化する方法は社労士・税理士の人材紹介事業|顧問先への紹介を収益化する方法で解説しています。
ケース2:スクールが卒業生を提携企業に無料で紹介する
プログラミングスクールなどが、卒業生を提携企業へ「無料で」引き合わせるケースです。無料であっても職業紹介に該当すれば原則許可が必要で、企業側から協賛金・紹介料などの名目で金銭を受け取っていれば、無料とは評価されない可能性があります。届出で無料職業紹介ができる「学校」は、学校教育法上の学校や専修学校などに限られます。民間のスクールは原則として許可が必要で、各種学校なら生徒数などの条件を満たせば無料職業紹介の許可を受けられます。また、営利法人が本業の生徒集めに役立てる目的で無料紹介を行う形は、無料職業紹介の許可基準に合わない場合があります。卒業生支援を適法に収益化する設計はスクールの人材紹介参入|卒業生支援の収益化と許可の要否を参照してください。
ケース3:取引先同士で人材を引き合わせる
「取引先A社が営業人材を探している。ちょうど別の取引先の知人が転職を考えているので引き合わせた」——単発・好意的な引き合わせがすべて職業紹介事業に当たるわけではありませんが、これを反復継続したり、営業上の見返りを期待して行ったりする場合は、事業性があると評価される余地が出てきます。業務運営要領では、1回限りの行為でも反復継続の意思があれば事業性があるとし、紹介を行う旨を宣伝・広告していれば原則として事業性ありと判断するとしています。反復性・対価性が出てきた段階で、許可取得を検討すべきラインだと考えてください。
いずれのケースも、最終的な該当性判断は個別事案によります。迷ったら管轄労働局への事前相談が最も確実です。
「無料だから大丈夫」で続けるリスク
許可を取らずにグレーな引き合わせを続けることには、次のリスクがあります。
- 法令違反リスク:許可を受けずに有料・無料の職業紹介事業を行うと、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です(職業安定法第64条)
- 本業への信用リスク:士業・スクール・代理店など信用が資産の業種ほど、「無許可紹介」の指摘が本業の信頼を損ないます
- 取引先を巻き込むリスク:紹介を受けた企業側も、コンプライアンス上の説明を求められる可能性があります
- 機会損失:本来は手数料を受け取れる価値提供を、リスクを抱えたまま無償で続けることになります
特に4点目は見落とされがちです。すでに人材と企業を引き合わせて感謝されている実績があるなら、それは「許可を取れば収益事業になる」シグナルでもあります。
会社として紹介事業を掲げていなくても、営業担当者が個々の判断で取引先に人材を引き合わせているケースは珍しくありません。組織として関知しないまま反復されると、実態として職業紹介を行っていたと評価されるリスクが残ります。紹介行為に関する社内ガイドライン(やってよい範囲・報告ルール)を定めておくことが、コンプライアンス上の第一歩です。
自社サービスに組み込む場合の3つの設計パターン
「人材の引き合わせ」を自社サービスに組み込みたい場合、取り得る設計は大きく3つです。
→ 表は横にスクロールできます
| 設計パターン | 内容 | 収益化 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| A. 情報提供に限定する | 求人・求職情報の掲載や共有にとどめ、選別・推薦・仲介は行わない | 広告・掲載料等の形は検討余地 | 運用が「あっせん」に踏み込まない社内ルールが必須。求職者の情報を集めて提供するなら特定募集情報等提供事業の届出が必要。境界は労働局に確認 |
| B. 無料職業紹介の許可を取得 | 対価を一切受けずに紹介を行う | 不可(いかなる名義でも対価を受けられない) | 会費を払う会員だけに紹介する、会員と会員外でサービスに差を付けるといった形は有料と判断されることがある。営利法人は本業の営業に役立てる目的では行えない |
| C. 有料職業紹介の許可を取得 | 紹介手数料を受けて事業として行う | 可(手数料は届け出た手数料表に基づく。業界の目安は理論年収の30〜35%) | 基準資産額500万円等の許可要件と体制整備が必要 |
2026年9月時点の制度に基づく整理です。料金や個別の可否は、一次情報と管轄の労働局で確認してください。
継続的なニーズと収益の見込みがあるなら、パターンCを軸に検討するのが自然です。パターンAは「事業にしない」ための守りの設計、パターンBは対価を受け取らない設計で、営利法人が本業のために使える形は限られます。Bを選んで後からCに切り替えると手続きが二度手間になりやすいため、最初に目的をはっきりさせてから選びます。
有料化(許可取得)を判断する3ステップ
自社の引き合わせ行為を整理し、許可取得を判断するフレームです。
現状の行為を棚卸しする
過去1年の「人材の引き合わせ」を列挙し、①選別・推薦・仲介まで踏み込んだか、②反復継続しているか、③金銭・営業上の見返りがあるか、の3点で整理します。1つでも該当があれば、労働局・専門家への確認を推奨します。
「やめる」か「事業化する」かを決める
グレーのまま続ける選択肢は取らないのが原則です。引き合わせの件数が少なく収益期待もないなら情報提供の範囲に行為を限定し、ニーズが継続的にあるなら有料職業紹介の許可取得による事業化を検討します。
許可取得の要件・費用・期間を確認する
有料職業紹介の許可には基準資産額500万円(1事業所)などの要件があり、申請から許可まではおおむね2〜3か月です(講習や書類の準備を含めると3〜4か月)。法人としての取得手続き・費用は有料職業紹介の免許取得|法人の費用・期間・要件【稟議用】で稟議に使える形に整理しています。
すでに引き合わせの実績がある企業は、求人側のニーズを持っているぶん、許可を取ったあとの論点が「求職者側の集客をどう設計するか」に絞られます。参入全体の流れは人材紹介事業への参入ガイド2026|市場性・許可・収支・体制の全体像で解説しています。
よくある質問(FAQ)
その「人材の引き合わせ」、許可なしで続けて大丈夫ですか?
L reachは初期費用・月額費用0円の着座課金型です。開業直後の面談獲得を、面談が実施された分の費用だけで支援します。
相談前に整理できること
- 初月の面談獲得ルート設計
- 固定費を抑えた導入
- 開業後の集客不足を補完
まとめ|「無料だから許可不要」は誤解。実態で判断し、迷ったら労働局へ
この記事のポイントを整理します。
- 職業紹介の定義(職業安定法第4条)に有料・無料の区別はなく、無料の職業紹介も原則許可制(届出で行えるのは学校・専修学校などの長や一定の法人に限られる)
- 有料と無料の違いは「いかなる名義でも対価を受け取らないか」。会費・委託費・コンサル料など名目を変えても、実態が紹介の対価なら有料職業紹介
- すべての情報を誰でも見られる形で提供するだけなら職業紹介に当たらないことが多いが、選別・加工・やり取りの差配に踏み込むと職業紹介(AIによる自動判断でも同じ)
- 士業の謝礼付き紹介・スクールの卒業生紹介・取引先の引き合わせは典型的なグレーケース
- グレーのまま続けず、「行為を情報提供に限定する」か「許可を取って事業化する」かを選ぶ
なお、この記事は一般的な整理で、個別事案の法的判断はできません。自社のケースが職業紹介に該当するかは、必ず管轄の労働局または専門家に確認してください。
許可を取って事業化する場合は、人材紹介事業への参入完全ガイドで市場性・収支・体制まで含めた検討材料を整理しています。また、事業化後の最大の壁は求職者集客です。L reachのような着座課金型送客サービスを立ち上げ期の集客に組み込む設計も含め、参入後の姿から逆算して許可取得を判断してください。
更新履歴
- 2026-09-24:届出で無料職業紹介ができる主体(学校・専修学校など、特別の法人、地方公共団体)と、各種学校・民間スクールの扱いを整理。2026年9月14日適用の業務運営要領に合わせて情報提供と職業紹介の区分の例を更新し、会費・委託費で無料と認められない例、許可までの期間を訂正
- 2026-07-08:公開
L reach編集部
人材紹介事業ナレッジ編集チームforesma株式会社が運営する求職者送客サービス『L reach』編集部。人材紹介会社の支援実績をもとに、集客・CV・運用ノウハウを発信しています。
開業初月から面談を確保するには、求人の整備と並行して、求職者と出会う入口を先に用意しておく必要があります。
初期費用・月額費用なし/契約期間の縛りなし



