事業参入

社労士・税理士の人材紹介事業|顧問先への紹介を収益化する方法

13分
社労士・税理士の人材紹介事業|顧問先への紹介を収益化する方法

社労士・税理士など士業の人材紹介事業への参入が注目されています。顧問先から日常的に寄せられる「良い人がいたら紹介してほしい」という相談は、正しく制度を整えれば事務所の新しい収益の柱になり得ます。本記事では許可の要否から収益モデル、注意点までを士業向けに整理します。

結論:顧問先への人材紹介を「謝礼を受けて」行うなら、有料職業紹介事業の許可が必要になる可能性が高く、無許可のまま収益化してはいけません。一方、許可を取得すれば、士業は「求人・信頼・労務情報」という他業種にはないアセットを持つ有力な参入者になれます。唯一の弱点は求職者集客であり、ここを最初に設計できるかが成否を分けます。

顧問先の「採用難相談」が収益機会になっている実態

社労士・税理士の事務所には、顧問業務の延長で採用に関する相談が集まります。中小企業の経営者にとって、月次で会う顧問は「経営の内情を知る唯一の外部パートナー」であり、求人媒体の営業担当よりも先に採用の悩みを打ち明ける相手だからです。

  • 「求人を出しても応募が来ない。何か手はないか」
  • 「知り合いで経理ができる人はいないか」
  • 「採用した人がすぐ辞める。定着する人を紹介してほしい」

こうした相談は、多くの事務所で「無償のサービス業務」として処理されてきました。知人を紹介しても謝礼は受け取らず、求人媒体を紹介して終わる。つまり、顧問先の採用ニーズという価値ある情報が、収益化されないまま日々流れているのが実態です。

一方、人材紹介市場そのものは拡大を続けています。矢野経済研究所の調査によると、人材紹介市場の市場規模は2024年度で4,490億円、前年度比12.0%増と成長しています。

出典: 矢野経済研究所「人材ビジネス市場に関する調査」人材紹介市場の市場規模(2024年度4,490億円・前年度比12.0%増)は矢野経済研究所のプレスリリース(https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3942)で公表されています。

この成長市場に対して、士業は「求人が自然に集まる」という構造的な優位を持っています。だからこそ、制度を正しく整えて事業として取り組む価値があります。事業会社を含む参入の全体像は人材紹介事業への参入ガイドで解説しています。

「謝礼を受けて人を紹介」は有料職業紹介|許可なしでは行えない

まず押さえるべき法律上の整理です。職業安定法は、求人者と求職者の間の雇用関係の成立をあっせんする行為を「職業紹介」と定義し、手数料や報酬を受けて職業紹介を業として行うには、厚生労働大臣の許可(有料職業紹介事業の許可)が必要と定めています。

出典: e-Gov法令検索「職業安定法」職業紹介の定義や許可制度は職業安定法の条文(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141)で確認できます。

士業の実務で問題になりやすいのは、次のようなグレーに見えるケースです。

  • 顧問先に知人の求職者を引き合わせ、成功時に「お礼」を受け取る
  • 採用コンサルティング契約の名目で、実質的に人選・引き合わせまで行う
  • 関与先同士で人材を融通し、紹介料相当を顧問料に上乗せする

反復継続の意思をもって、報酬を得てあっせんを行えば、契約書の名目にかかわらず職業紹介と評価される可能性があります。該当するかどうかをご自身の判断だけで結論づけず、事業化を検討する段階で管轄の労働局に確認することを強くおすすめします。無許可で紹介を行った場合に何が起こり得るかは、無許可の職業紹介のリスクで詳しく整理しています。

士業だからこそ「適法に」参入すべき理由

士業は法令遵守を看板とする職業です。無許可紹介が疑われる運用は、紹介事業のリスクにとどまらず、本業である顧問業務の信頼そのものを毀損します。逆に言えば、許可を取得して堂々と紹介事業を掲げることが、顧問先への最も誠実な提案になります。

士業が持つ3つのアセット|なぜ人材紹介と相性が良いのか

人材紹介事業の競争力は「求人の質」「候補者との信頼」「マッチング精度」で決まります。士業はこの3つに直結するアセットをすでに持っています。

アセット1:顧問先の求人ニーズが自然に集まる

一般の人材紹介会社は、求人を獲得するために法人営業(求人開拓)に多大な工数を割きます。士業は顧問契約というリレーションの中で、採用ニーズが「相談」という形で向こうからやってきます。求人開拓コストが構造的にほぼゼロという点は、他業種からの参入者に対する最大の優位です。

アセット2:経営者からの信頼

人材紹介は「誰から紹介されたか」が意思決定に大きく影響するビジネスです。毎月財務や労務を見ている顧問からの紹介は、初対面の営業からの推薦とは説得力がまったく異なります。手数料の交渉や入社後のフォローでも、既存の信頼関係が効きます。

アセット3:労務・組織の内部情報

社労士であれば就業規則・賃金水準・離職状況、税理士であれば収益力や成長性を把握しています。「この会社のこのポジションに、どんな人が定着するか」を判断する材料の豊富さは、外部のエージェントには真似できません。ミスマッチの少ない紹介は返金リスクを下げ、収益の安定にも直結します。

ただし、これらの情報は守秘義務の対象でもあります。使い方の線引きは後述の「利益相反・守秘義務」で必ず確認してください。

士業事務所が許可を取得する際の論点

有料職業紹介事業の許可要件は業種を問わず共通ですが、士業には固有の論点があります。

※2026年7月時点の情報。制度・料金は必ず一次情報をご確認ください。

→ 横にスクロールできます

論点 内容 士業特有の注意点
事業主体(法人形態) 個人・法人いずれも申請可能 士業法人(社労士法人・税理士法人等)は法律上業務範囲が限定されるため、紹介事業は個人事務所と別の株式会社等で行う設計が検討されることが多い。所属団体・労働局への事前確認が必須
基準資産要件 基準資産500万円×事業所数、うち現金・預金150万円+(事業所数−1)×60万円 新設法人で参入する場合、資本金の設計段階で要件を織り込む
法定費用 1事業所14万円(登録免許税9万円+収入印紙5万円) 別法人設立の場合は会社設立費用が別途必要
事務所要件 面積基準(旧20㎡)は撤廃済み。求職者のプライバシーを確保できる構造が必要 顧問業務と同一フロアで行う場合、個人情報管理の区分が論点になりやすい
職業紹介責任者 講習受講等の要件を満たす責任者の選任が必要 代表者が本業と兼務できるかは業務量・常駐性の観点で確認が必要
審査期間 申請から許可まで約3〜4ヶ月 顧問先に「紹介できます」と案内できるまでのリードタイムとして計画に織り込む
出典: 厚生労働省「有料職業紹介事業の許可要件」基準資産要件・法定費用・事務所要件などの許可要件は厚生労働省の案内ページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/shoukai/)で確認できます。

要件の詳細と申請手順は法人が有料職業紹介の許可を取得する手順、責任者の選任・兼務の考え方は職業紹介責任者の要件と兼務でそれぞれ解説しています。社労士は許可申請の代理を業務として扱う立場でもあるため、申請実務そのものは大きな障壁になりません。むしろ論点は「どの法人格で」「誰を責任者にして」運営するかの設計です。

収益モデル|顧問料×紹介手数料のモデルケース

人材紹介の手数料は、理論年収の30〜35%(届出制手数料)が相場です。顧問料が月数万円の積み上げであるのに対し、紹介手数料は1件で顧問料1〜2年分に相当し得る単価です。

以下は前提を明示したモデルケースです。

※2026年7月時点の情報。制度・料金は必ず一次情報をご確認ください。

→ 横にスクロールできます

前提項目 設定値
顧問先数 40社
うち年間を通じて採用ニーズのある顧問先 12社
紹介が成立する件数 年6件
想定年収 400万円
手数料率 30%
1件あたり紹介手数料 120万円

このモデルでの紹介事業の年間売上は、120万円×6件=720万円。仮に顧問料単価が月4万円なら、顧問15社分の年間顧問料に相当する売上が上乗せされる計算です。さらに重要なのは収益の質です。

  • 求人開拓コストがほぼゼロのため、粗利率が一般の紹介会社より高くなりやすい
  • 採用成功が顧問先の業績改善につながり、本業の顧問契約の解約率低下・単価向上にも波及する
  • 「労務顧問+採用支援」のセット提案で、新規顧問の獲得フックにもなる

※前提を変えると結果は変わります。顧問先数・採用ニーズ比率・成立率は事務所の顧客構成によって大きく異なるため、必ず自事務所の数値で試算してください。

モデルケースの最大の不確実要素

上記モデルで最も不確実なのは「紹介が成立する件数」です。求人があっても、紹介できる求職者がいなければ成立件数はゼロになります。士業の参入計画では、収益モデルよりも先に「求職者をどう集めるか」を決めるべきです(後述)。

利益相反・守秘義務|士業ならではの注意点

士業の紹介事業には、一般の紹介会社にはないコンプライアンス上の論点があります。ここを曖昧にすると本業を巻き込んだ信頼失墜につながるため、開始前にルール化してください。

注意点1:守秘義務と情報の目的外利用

顧問業務で知り得た賃金台帳・組織情報・離職データを、本人や顧問先の同意なく紹介事業のマッチングに流用することは、守秘義務や個人情報保護の観点で問題になり得ます。紹介事業で使う情報は、紹介事業の契約に基づいて改めて取得・同意取得する運用を徹底しましょう。

注意点2:顧問先同士の利益相反

顧問先Aの従業員を顧問先Bに紹介するような動きは、Aから見れば「顧問が引き抜きに加担した」と映ります。在職者への転職勧奨は行わない、顧問先の従業員は原則として紹介対象にしない、といった自主ルールを明文化しておくべきです。

注意点3:報酬の透明性

紹介手数料は届出した手数料表に基づいて明示的に請求し、顧問料への上乗せなど不透明な回収はしないこと。顧問契約と紹介契約は書面を分け、料金体系を顧問先に説明できる状態にしておきます。

注意点4:紹介の質に対する責任

士業からの紹介は信頼度が高いぶん、ミスマッチ時の失望も大きくなります。返金規定(早期退職時の手数料返還)を契約に明記し、入社後フォローまで含めた設計にすることが、本業の信頼を守る保険になります。

唯一の弱点は「求職者集客」|求人はあるのに紹介できない問題

士業の紹介事業は、求人側は強い一方で、求職者側のアセットをほぼ持っていません。ここが唯一かつ最大の弱点です。

  • 顧問先の求人は集まるが、紹介できる候補者がいない
  • 求人媒体やスカウトの運用ノウハウがなく、広告費だけが先行する
  • 本業と並行するため、集客のPDCAに割ける時間がない

集客チャネルの選択肢は、自社サイト・SNS・リスティング広告・スカウト媒体・送客サービスなどがあります。士業の参入で現実的なのは、固定費をかけずに面談機会だけを変動費で調達する設計です。

その選択肢の一つが着座課金型の求職者送客サービスです。たとえばL reachは、初期費用・月額0円、面談実施1件あたり1.5万〜3.5万円(税別)の着座課金で、プレ面談済み・日程調整済みの求職者(平均24.7歳・20代比率95.7%)を送客するサービスです。若手未経験層の採用ニーズが多い中小企業の顧問先とは親和性が高く、「求人はあるのに候補者がいない」状態を立ち上げ初月から解消する手段になります。あくまで選択肢の一つですが、本業と並走する士業にとって「集客を外部化し、面談とマッチングに集中する」構造は検討する価値があります。

士業の人材紹介参入 5ステップ

1

顧問先の採用ニーズを棚卸しする

直近1年で採用相談のあった顧問先をリスト化し、職種・想定年収・緊急度を整理します。年間の成立見込み件数を保守的に見積もり、事業化の是非を判断します。

2

事業主体と責任者を設計し、労働局に事前相談する

士業法人の業務範囲との関係を整理し、別法人化の要否を決めます。職業紹介責任者を誰が担うか、本業との兼務が可能かも含めて管轄労働局に確認します。

3

許可申請(審査約3〜4ヶ月)

基準資産・事務所要件を整えて申請します。審査期間中に、手数料表・紹介契約書・返金規定・利益相反ルールを整備しておきます。

4

求職者集客チャネルを確保する

許可取得と同時に紹介を開始できるよう、送客サービス・広告などの集客手段を許可取得前から選定・契約準備しておきます。ここが遅れると「許可はあるが売上ゼロ」の期間が伸びます。

5

顧問先に採用支援サービスとして案内する

許可取得後、顧問先に正式なサービスとして案内します。労務顧問と採用支援のセット提案は、既存顧問の深耕と新規開拓の両方に効きます。

よくある質問(FAQ)

Q
顧問先から採用のお礼として謝礼をもらうのは違法ですか?
A
報酬を受けて職業紹介(あっせん)を業として行う場合、有料職業紹介事業の許可が必要とされています。単発の善意の紹介か、業としての紹介かは個別の事情によるため、謝礼を受け取る運用を続ける前に管轄の労働局へ確認することをおすすめします。
Q
社労士法人・税理士法人のまま人材紹介事業はできますか?
A
士業法人は法律で業務範囲が定められているため、紹介事業を士業法人内で行えるかは形態ごとに検討が必要です。実務では株式会社など別法人を設立して許可を取得する設計が多く検討されます。所属団体と管轄労働局の双方に事前確認してください。
Q
許可取得にはいくらかかりますか?
A
法定費用は1事業所あたり14万円(登録免許税9万円+収入印紙5万円)です。このほか、基準資産500万円(うち現金・預金150万円)を満たす財務状態が必要で、別法人を設立する場合は設立費用も加わります。
Q
本業と兼務で運営できますか?
A
職業紹介責任者の選任など体制要件を満たせば、兼務での運営自体は可能なケースがあります。ただし面談・マッチング・入社フォローには相応の工数がかかるため、集客や日程調整を外部化して本業への影響を抑える設計が現実的です。
Q
顧問先の従業員を別の顧問先に紹介してもよいですか?
A
法的な整理以前に、利益相反として顧問関係を損なうリスクが大きい行為です。在職中の顧問先従業員は紹介対象にしないなど、自主ルールを明文化して運用することをおすすめします。
Q
求職者はどうやって集めればよいですか?
A
自社集客(サイト・SNS・広告)と外部調達(スカウト媒体・送客サービス)の組み合わせが基本です。本業と並行する士業には、固定費なしで面談確定済みの求職者を調達できる着座課金型送客を軸に、中長期で自社チャネルを育てる二段構えが向いています。
開業・立ち上げフェーズの会社様へ

顧問先の求人はある。求職者集客の設計はできていますか?

L reachは初期費用・月額費用ゼロで、開業フェーズの会社様の面談獲得を成功報酬で支援します。

相談前に整理できること

  • 初月の面談獲得ルート設計
  • 固定費を抑えた導入
  • 開業後の集客不足を補完

まとめ|士業の人材紹介は「許可×集客」の2点を先に固める

士業の人材紹介事業参入のポイントを整理します。

  • 顧問先への紹介を収益化するなら、有料職業紹介の許可が前提。無許可の謝礼受領はリスクであり、労働局への事前確認が出発点
  • 士業は「求人・信頼・労務情報」という強力なアセットを持ち、求人開拓コストがほぼゼロという構造的優位がある
  • 収益モデルは顧問料に対して単価が大きく、本業の顧問契約強化にも波及する
  • 守秘義務・利益相反のルール化は開始前に必須
  • 唯一の弱点は求職者集客。許可取得と並行して集客チャネルを確保しないと「許可はあるが紹介できない」状態が続く

参入形態の全体比較や市場環境は人材紹介事業への参入ガイドを、参入に関する記事の一覧は人材紹介事業参入のハブページをご覧ください。許可申請の具体的な手順は法人の許可取得ガイドで解説しています。

L

L reach編集部

人材紹介事業ナレッジ編集チーム

foresma株式会社が運営する求職者送客サービス『L reach』編集部。人材紹介会社の支援実績をもとに、集客・CV・運用ノウハウを発信しています。

運営:foresma株式会社最終更新:

開業初月から面談を埋めるには、求人の整備と並行して「集客の入口」を確保しておくことが重要です。

開業・立ち上げフェーズの会社様へ

顧問先の求人はある。求職者集客の設計はできていますか?

L reachは初期費用・月額費用ゼロで、開業フェーズの会社様の面談獲得を成功報酬で支援します。

関連カテゴリの記事をまとめて読む

ご相談時に整理できること

  • 初月の面談獲得ルート設計
  • 固定費を抑えた導入
  • 開業後の集客不足を補完

初期費用・月額費用なし/契約期間の縛りなし